月別アーカイブ: 2023年9月

ふつふつ

 

ずっと前から感心のあった樹皮や茎から繊維をとること。でもそれは、遠い土地のできごとのような気がして。木綿や羊毛に手を動かすばかり。

自然が暮らしとともに在る今、心の中にあった草木への興味がまたふつふつと湧き出してきた。

それは染料としてではなく素材としての興味。そういう時は不思議とその興味がいろいろな形で近づいてきます。

アイヌ民具の編み袋にサラニプというものがあることを知ったのはこの夏のこと。サラニプという聞き慣れない言葉と美しい響きに引き寄せられ調べてみると、ハルニレやシナを材料としていることが分かりました。

ずっと前から抱いていた興味が、年月を経てまたふつふつし始めていることが嬉しくて、自然と手を動かしたくなり。

北海道はちょうどとうもろこしの美味しい季節。茹でるために手にしたとうもろこしの皮を見て、これも糸になるのかな。

そうしてできた糸でした。

作り方はとてもシンプル。

1.とうもろこしの皮を天日干しします。

2.しっかり乾かします。

3.細く裂いてビニール袋に入れて、霧を吹いて湿らせます。太さは、ひとつ作ってみると自分の欲しい太さがわかります。

4.とうもろこしの皮を2本揃えて片方の端を片結びして、柱にくくりつけたクリップで結び目をはさみます。撚りをかけて糸にします。継ぎ足す時は新しい一本をへの字にして、なくなりそうな皮と一緒に撚りかけをします。つなぎめの飛び出した部分をカットして完成です。

余談。岩手出身の夫はとうもろこしのことをとっきみといいます。とっきみ、なんか可愛い。

毛洗い

いつになく暑かったこの夏。換気扇が故障してしまい火の仕事から遠ざかっていましたが、ようやく朝晩だけは涼しくなってきたのを機に、近くの羊農家さんから分けていただいた羊の毛をやっと洗うことができました。息子が眠った夜に洗うため、少量の200gだけ朝のうちに湯につけ込みました。

11時過ぎ、つけ込み時に70℃あった湯は35℃まで下がっていました。表面に浮く油分をすくい取ると、茶色い液が現れました。つけ込みでかなり汚れが落ちているようです。タライに新しい湯とモノゲンを用意して、ひとつかみずつ洗っていきます。毛先の汚れもほとんど無くて洗いやすい毛。細かいゴミが多いのでこまめに湯を変えます。

1時間かからずに洗いが終わり、すすぎに入りました。手の感触でぬめりが全然無かったので、通常2回行うすすぎを今回は1回にしてみました。水気をしっかり絞った毛をザルにあけて乾かします。湿度の高いこの土地で手絞りの毛を乾かすのは34日かかりました。この後毛ほぐしという作業をします。

羊農家さんに聞いた毛洗いの方法は食器洗いの洗剤を使うというものでした。以前にはこの地域にも紡ぎ手がたくさんいて、皆で集って毛洗いや紡ぎをしていたのだそうです。でもそれは昔のはなし。

手紡ぎ手織りのホームスパン。細々とでも、ずっと続けていきたいと思います。

 

毛洗いメモ :  200g、モノゲン液 20cc(つけ込み用)20cc(洗い用)、70℃の湯 8L、使った寸胴サイズ 10L

洗い上がり : 歩留62.5、サフォーク種の混合と聞いていたけど思ったより柔らかめ。ひざかけか、仕立て小物の生地にしようかな。