新春

だいぶ遅くなりましたが

明けましておめでとうございます

産後、なかなか機に向かえない日々でしたが、年末あたりから少しずつ織り始めました。

毛を洗いながら、どんな糸を紡ぐか想像して

糸を紡ぎながら、どんな布を織るか想像して

布を織りながら、次にどんな布を織るか想像して

ああ 楽しい 楽しい 楽しい

暮らしの中の布づくり。

こちらでも、また手織布を紹介していきたいと思います。

今年もよろしくお願いします。

 

 

桜の落ち葉染め

10月の初め、家のすぐそばの桜の葉が落ち始めました。落ち葉にも色を持つ木があって、山葡萄の紅葉で染めたことがありました。そろそろ染めも再開しようと、今年は桜の葉で染めてみることにしました。

家族で小ぶりなザルいっぱいの葉を集めました。できるだけ落ちてすぐの赤や黄色の葉を選んで拾います。葉は土に還る準備をしているものもあり、全体に茶色で柔らかくなった葉もあります。そういう葉はそっと見守ります。たくさん拾えました。

土が付いていればさっと水洗いして鍋に入れます。いつも使っているのは中古品で安く手に入れたラゴスティーナのパスタ鍋。蓋がボウルの役目もはたす優れもの。底も厚くて丈夫、台所での少量の染めものや小枠に巻いた糸蒸しにぴったりなのです。

煮出す時の水量は葉がひたひたに浸かるくらい。今回はおおよそ1Lくらいでしょうか。火にかけて沸騰したらそのまま2030分煎じました。なんだか桜餅のにおい。いいにおい。液を濾して取れるのが1番煎じ。葉を鍋に戻してまた1Lの水を入れ煮出す。2番煎じです。

3番煎じからアルカリ抽出にしてみました。水1Lあたり0.5gの炭酸カリウムを加えます。すると葉の中の色素が一気に押し出されるように色が濃くなります。同じように4番、5番と液をとりました。

今回は35番までの液を合わせて使います。鍋に保管して、時々ストーブで温めながらカビの発生を防ぎ、約1ヶ月寝かせてみました。寝かせることで赤みが出るか試してみます。

いよいよ染めます。錫で先媒染しておいた毛を、3040℃に温めた染液に浸します。ストーブの上にあげてゆっくりと染色。沸騰から3040分火にかけて、火からおろしてそのまま翌日まで置きます。湯気がすごい。

翌日、染液から出した毛をぬるま湯で23回溜めすすぎをして脱水し、広げて乾かします。柔らかい毛だったので可愛いくすみベビーピンクになりました。糸紡ぎが楽しみです。

 

染色メモ:毛(ハーフブレッド)100g 桜の落ち葉107g 錫媒染()2% クエン酸6% 酒石英1%

wild grapes

山々が秋色に染まるころ、山葡萄は実をつけます。

車の窓から見える景色に蔓を見ては、岩手の山景色を思い出しています。

北海道に来てからは、入ってよい山がまだ分からず山葡萄採りは諦めていましたが、村の直売所で安く出ているのを見つけて、2年ぶりに山葡萄ジュースを仕込むことにしました。

村の直売所は4月から11月までの季節、週に3日ひらかれています。遠くから買いにくる人もいて、朝は開店前から列ができるほど人気です。

直売所の山葡萄は房にすずなりで、粒揃いでした。

このあたりの人たちは葡萄のお酒を作る人が多いようですが、我が家は山葡萄100%ジュースです。

実を一粒一粒丁寧にとり瓶に入れていきます。水がつくとカビの原因になるので、洗わずに入れます。瓶がいっぱいになったら砂糖をスプーン三杯くらい入れて蓋をします。蓋は完全に閉めず、少しだけ開けておきます。常温で部屋に置いておくと発酵してきます。時々ふって、数日後、葡萄色のジュースができます。飲むときはお湯とお好みでハチミツを混ぜていただきます。

原液がなくなったら、残った実を水と一緒に鍋で煮出し、絞ってできるのが二番絞りジュースです。大切な山の恵みです。たっぷりといただきます。

発酵が強いと、蓋を押し上げてふきだしてしまう時があります。振るときは瓶の口にラップをして。それでも破いてしまう事もあり要注意。液から実が浮いた状態もカビの元なので注意。11回は振った方が良いです。

ところで、山葡萄を英訳してみたらwild grapesと出てきました。ワイルドだなんて、自然の中に育った実にはうってつけの名前。

パン用に仕込んだ天然酵母のことはまた改めて書きます。

 

眠れない夜に

わが家の北側の壁には、蔦が這っています。その蔦の葉が今年も紅葉して実をつけました。ナツヅタというブドウ科の蔓植物で、実は小さな葡萄色で鳥も食べないすっぱい実です。

ふと、染められるのかなと思って調べてみたら、葉で染められるみたいです。でも、この蔓に鋏を入れることはしません。切ってはいけないような。何故かわからないけどそう思います。

引っ越してきたときはこの蔓を取り除こうと除草剤まで買ってきたのに、何故か、なにもしないで住み続けています。住み続けていると、気にならなくなってきました。時々離れたところからながめています。この蔦とは、つかずはなれずな関係なのです。

はなしは変わりますが、キタリスは冬眠をしないので冬に備えて3000個もの木の実を地中に埋めるそうです。それなのに、埋めたことのほとんどを忘れてしまうそうです。でもそうして残った木の実が春に新しい芽を出し、森を育てているそうです。今頃もせっせと木の実を集めているのかと思うと愛おしくなります。

秋の夜、草木やリスに思いを馳せてみました。

 

散歩の詩

むかし西の町に暮らしたことがあって、染め物のお手伝いをさせてもらっていました。ある日、たくさんある色の中から好きな糸を引きそろえて玉巻きをする仕事がありました。四季の恵みを移した糸は多彩。どの糸を合わせたらいいのか本当に分からなくて手が止まっていた時、少し外を散歩しておいでと言われた。

大きな日本家屋の工房の周りは田だけが広がっています。空は、夕暮れが近づいています。しばらく歩いていると、すーっと足下に冷たい空気が流れ、辺りは霧に包まれました。ただそれだけのできごとでした。それなのに、工房へ戻ると手はどんどん動きました。見た景色や感じた空気が、どの糸を選べばいいか教えてくれていました。そうそう、それでいいのよと微笑まれて。散歩がもっと好きになりました。

今日は家のまわりをゆっくり歩きました。桜の木の葉が少しずつ色づいていて、とても綺麗でした。とくに曇りの日は、ピィと晴れてる日よりも好き。空と木と葉が静かで落ち着きます。この景色も、いつか布に織りこまれる日があるのでしょう。

人の心はとても小さい。自然を取り込むよりも、自然の中に入っていたい。

最後はちょっと詩みたいに。