投稿者「oraka」のアーカイブ

ふつふつ

 

ずっと前から感心のあった樹皮や茎から繊維をとること。でもそれは、遠い土地のできごとのような気がして。木綿や羊毛に手を動かすばかり。

自然が暮らしとともに在る今、心の中にあった草木への興味がまたふつふつと湧き出してきた。

それは染料としてではなく素材としての興味。そういう時は不思議とその興味がいろいろな形で近づいてきます。

アイヌ民具の編み袋にサラニプというものがあることを知ったのはこの夏のこと。サラニプという聞き慣れない言葉と美しい響きに引き寄せられ調べてみると、ハルニレやシナを材料としていることが分かりました。

ずっと前から抱いていた興味が、年月を経てまたふつふつし始めていることが嬉しくて、自然と手を動かしたくなり。

北海道はちょうどとうもろこしの美味しい季節。茹でるために手にしたとうもろこしの皮を見て、これも糸になるのかな。

そうしてできた糸でした。

作り方はとてもシンプル。

1.とうもろこしの皮を天日干しします。

2.しっかり乾かします。

3.細く裂いてビニール袋に入れて、霧を吹いて湿らせます。太さは、ひとつ作ってみると自分の欲しい太さがわかります。

4.とうもろこしの皮を2本揃えて片方の端を片結びして、柱にくくりつけたクリップで結び目をはさみます。撚りをかけて糸にします。継ぎ足す時は新しい一本をへの字にして、なくなりそうな皮と一緒に撚りかけをします。つなぎめの飛び出した部分をカットして完成です。

余談。岩手出身の夫はとうもろこしのことをとっきみといいます。とっきみ、なんか可愛い。

毛洗い

いつになく暑かったこの夏。換気扇が故障してしまい火の仕事から遠ざかっていましたが、ようやく朝晩だけは涼しくなってきたのを機に、近くの羊農家さんから分けていただいた羊の毛をやっと洗うことができました。息子が眠った夜に洗うため、少量の200gだけ朝のうちに湯につけ込みました。

11時過ぎ、つけ込み時に70℃あった湯は35℃まで下がっていました。表面に浮く油分をすくい取ると、茶色い液が現れました。つけ込みでかなり汚れが落ちているようです。タライに新しい湯とモノゲンを用意して、ひとつかみずつ洗っていきます。毛先の汚れもほとんど無くて洗いやすい毛。細かいゴミが多いのでこまめに湯を変えます。

1時間かからずに洗いが終わり、すすぎに入りました。手の感触でぬめりが全然無かったので、通常2回行うすすぎを今回は1回にしてみました。水気をしっかり絞った毛をザルにあけて乾かします。湿度の高いこの土地で手絞りの毛を乾かすのは34日かかりました。この後毛ほぐしという作業をします。

羊農家さんに聞いた毛洗いの方法は食器洗いの洗剤を使うというものでした。以前にはこの地域にも紡ぎ手がたくさんいて、皆で集って毛洗いや紡ぎをしていたのだそうです。でもそれは昔のはなし。

手紡ぎ手織りのホームスパン。細々とでも、ずっと続けていきたいと思います。

 

毛洗いメモ :  200g、モノゲン液 20cc(つけ込み用)20cc(洗い用)、70℃の湯 8L、使った寸胴サイズ 10L

洗い上がり : 歩留62.5、サフォーク種の混合と聞いていたけど思ったより柔らかめ。ひざかけか、仕立て小物の生地にしようかな。

 

羊の毛

近くの羊の牧場で、去年刈られた羊の毛をもらいました。

広げてみるとしっかり乾いていて穏やかな羊の匂い。

家での毛洗いは少量ずつしかできないと思い、300gずつを袋に分けて入れます。全部で1465g!お試しとはいえたくさん。

羊たちは牧草地でおもむくままに暮らしているので、藁がたくさん付いています。でも、外国の草みたいにとげとげはしていないから毛ほぐしでハラハラ落ちそうな予感がします。

サフォーク種に何かが混ざっているそうで、服地向きなのかなぁ。早く洗って紡いでみたい。

 

木彫の店のお話

阿寒湖のほとりに木彫の店美鈴という好きなお店があります。老夫婦と1匹の犬がいて、古い木彫の作品がいっぱいあります。商品と呼ぶより作品と呼ぶほうが似合うお店です。2回目に訪れた時に木彫の銘々皿を買いました。クルミの木でできていることと、もう10年だか20年だかずっと前に作られたものだということを教えてくれました。初めて来た日にも見ていて、手には取らずに帰りました。それからずっと心の中に残っていました。次に来た時にあったら買おうと、密かに思っていました。想像していたより安くてびっくり。2つのうちのどちらを買うか少し迷ってから、こちらに決めました。次に来た時にもうひとつがまだそこにあったら買おうと、また密かに思っています。子どもの離乳食用に良さそうなプレートも見つけたので、きっとまた訪ねるはずです。知らない土地に住み始めて一年、好きな場所がふえてきています。

春来たる

家のまわりに芝桜が咲きました。この土地に住み始めて1年が経とうとしています。引っ越してきた6月にも、確かこの芝桜は咲いていました。今年もまた咲いてくれてうれしいな。

春は好きな季節です。昔は秋が好きだったのに、いつのまにか春が好きになっていました。寒い地域に住むようになって、春の訪れが心地良く嬉しい気持ちにさせてくれるからかもしれません。それと、春の山々の色が好きです。淡い何色もの緑がモヤモヤと重なりあうあの色が大好きで。桃色の花たちも気持ちを晴れやかにしてくれるから、いい。そんな景色に勇気づけられて、また機に向かいたくなってしまいます。とはいえ産後の身体は思うように動かず。先ずはゆっくり糸でも紡いでみようかな。

糸がふえてきたら、また紹介します。