投稿者「oraka」のアーカイブ

行方不明になったホームスパン

先日、ビバテラスにあるloomsさんへ作品を届けに伺った時のこと。

坊やを前側に抱っこして、ホームスパンを風よけにしながら、手荷物少なめにお邪魔しました。用事を済ませて駐車場を出て、そのあとお米を買いに行きました。お店を出て帰路に向かって家の方のマーケットに着いたところで、ホームスパンのブランケットが無いことに気づきました。

うそ...!?落とした...!?お米を買うときには使わなかったので、ビバテラスの駐車場で落とした可能性が高い。落としてから2時間以上経っています。夫に探しに戻ってみるか聞かれましたが、先ずはloomsで働く友人へ電話をしました。お仕事中にもかかわらず駐車場をひと回りしてくれて、でも見当たらず。誰かが拾ってどこかに届けていてくれるか、拾われて貰われていってしまったか、思いが頭の中をぐるぐるぐる。半分諦めている私の隣で夫は諦めきれていないようで、お米を買ったお店に電話をしてくれて、店員さんも駐車場を見に行ってくれて。でもやっぱり無い。落としたのは自分で織ったホームスパン。思い入れはあるけれど、どこかでまた織ればいいやという思いも浮かんでいた。それでもなんとなく駐車した時の近くのお店に届いていないかなと思って営業時間を調べてみる。うどん屋さんはお昼の営業で終わってる。カフェは…22時までやってる!少し迷ってsunnys cafeさんに電話をしてみました。

落としたホームスパンのサイズが微妙で、マフラーより幅が広くて、ショールと言えるほど長くなくて、ブランケットってあんまり落とすものでは無いなぁ...何て言おうか考えながら口から出たのは結局ショールでした。

ショールの落とし物はありませんでしたか?

するとお店の方が、どんなショールですか?と聞いてくれます。もしかしてそこにあるの?ちょっとだけ期待しながら、手織りでベージュでくすんだ緑と茶色が織り込まれていて

少々お待ちください。希望の光がみえて、そして数秒後。

ありますよ〜。

え、あった!!!嬉しい!!!(心の声)

そのまますぐに取りに伺い、友人にも報告とお礼のメールをして。お店の方によると、どうやら駐車場でどなたかが拾って届けてくれていたようです。

綺麗に畳まれたホームスパンを手渡されたとき、もう絶対無くさないよと心の中で誓いました。

今日は坊やのお昼寝ブランケットに使っています。外出に使うのはまだちょっとこわい。

小さな子を連れていると、そちらが優先になり自分のことがおろそかになりがち。一番大切なのはもちろん子どもなのですが。

気をつけて!というメッセージを受け取ったような、そんな出来事でした。

 

 

 

新年のご挨拶

新年明けましておめでとうございます

今年の年越しは、数年ぶりの岩手で過ごしました。魚屋さんにお願いして宮古から仕入れてもらった大きな真鱈と自家栽培の白菜で鍋をたっぷりと作り皆で美味しくいただきました。

土地には、その土地の暮らしがあって。

ここ数年移動が多くていろいろな場所に住んでいますが、人も住も食もその土地ならではの知恵と工夫があっておもしろいです。

ただ、変わらないのは、織りを続けていきたいという思い。

今年もきっと忙しく動くときもあると思いますが、その中でもホームスパンや織りがたくさんできるように…頑張ろうと思います。

 

今年もどうぞよろしくお願いします。

 

 

 

はじまりのとき

 

北海道から岩手へ舞い戻り、二ヶ月経ちました。完全な引越しではなく長期滞在ということで、何を持っていくかとても悩みました。道具が無いと出来ないホームスパン作り。間借りさせてもらう家には機を組み立てる部屋がありません。織りは諦めて紡ぎに専念しようかなと前向きに考えて、何種類かの毛と手回しのカーダー、小さなごみを取るためのピンセット、紡毛機、小枠と大枠を数個、座繰り、綛あげなど糸作りに必要な道具を持ってきました。すると不思議なことにすぐに紡げそうなスライバーをいただいたり、手紡ぎ糸でのダーニングレッスンの依頼がきたり。紡毛機がフル回転で働いてくれています。

静かに何かが動き出したような感覚があって、今なのかなぁという思いもあって、屋号を改めることにしました。

milk homespun

新しいはじまりのとき。ロゴマークも新しく考えました。

盛岡への移住の際、泣く泣く実家に預けてきた愛猫のミルクをデザインの中心にしたいと思っていました。生活環境がどんどん変わり迎えに行くことが叶わず、あの時離れなければよかったと心の中がざらざらする時もあります。ホームスパンをやりたいと、自分の氣持ちを優先させた結果です。だから織りを仕事として暮らしていく。それを続けていくことが大切なんだと思います。そばで見守っていてね、そんな意味も込めてデザインしました。

それから、Instagramに新しい屋号のアカウントを作りました。online shopのオープンに向けて準備も進めていますので、blogもインスタも時々のぞいてみていただけたら嬉しいです。

 

 

 

新春

だいぶ遅くなりましたが

明けましておめでとうございます

産後、なかなか機に向かえない日々でしたが、年末あたりから少しずつ織り始めました。

毛を洗いながら、どんな糸を紡ぐか想像して

糸を紡ぎながら、どんな布を織るか想像して

布を織りながら、次にどんな布を織るか想像して

ああ 楽しい 楽しい 楽しい

暮らしの中の布づくり。

こちらでも、また手織布を紹介していきたいと思います。

今年もよろしくお願いします。

 

 

桜の落ち葉染め

10月の初め、家のすぐそばの桜の葉が落ち始めました。落ち葉にも色を持つ木があって、山葡萄の紅葉で染めたことがありました。そろそろ染めも再開しようと、今年は桜の葉で染めてみることにしました。

家族で小ぶりなザルいっぱいの葉を集めました。できるだけ落ちてすぐの赤や黄色の葉を選んで拾います。葉は土に還る準備をしているものもあり、全体に茶色で柔らかくなった葉もあります。そういう葉はそっと見守ります。たくさん拾えました。

土が付いていればさっと水洗いして鍋に入れます。いつも使っているのは中古品で安く手に入れたラゴスティーナのパスタ鍋。蓋がボウルの役目もはたす優れもの。底も厚くて丈夫、台所での少量の染めものや小枠に巻いた糸蒸しにぴったりなのです。

煮出す時の水量は葉がひたひたに浸かるくらい。今回はおおよそ1Lくらいでしょうか。火にかけて沸騰したらそのまま2030分煎じました。なんだか桜餅のにおい。いいにおい。液を濾して取れるのが1番煎じ。葉を鍋に戻してまた1Lの水を入れ煮出す。2番煎じです。

3番煎じからアルカリ抽出にしてみました。水1Lあたり0.5gの炭酸カリウムを加えます。すると葉の中の色素が一気に押し出されるように色が濃くなります。同じように4番、5番と液をとりました。

今回は35番までの液を合わせて使います。鍋に保管して、時々ストーブで温めながらカビの発生を防ぎ、約1ヶ月寝かせてみました。寝かせることで赤みが出るか試してみます。

いよいよ染めます。錫で先媒染しておいた毛を、3040℃に温めた染液に浸します。ストーブの上にあげてゆっくりと染色。沸騰から3040分火にかけて、火からおろしてそのまま翌日まで置きます。湯気がすごい。

翌日、染液から出した毛をぬるま湯で23回溜めすすぎをして脱水し、広げて乾かします。柔らかい毛だったので可愛いくすみベビーピンクになりました。糸紡ぎが楽しみです。

 

染色メモ:毛(ハーフブレッド)100g 桜の落ち葉107g 錫媒染()2% クエン酸6% 酒石英1%