投稿者「oraka」のアーカイブ

散歩の詩

むかし西の町に暮らしたことがあって、染め物のお手伝いをさせてもらっていました。ある日、たくさんある色の中から好きな糸を引きそろえて玉巻きをする仕事がありました。四季の恵みを移した糸は多彩。どの糸を合わせたらいいのか本当に分からなくて手が止まっていた時、少し外を散歩しておいでと言われた。

大きな日本家屋の工房の周りは田だけが広がっています。空は、夕暮れが近づいています。しばらく歩いていると、すーっと足下に冷たい空気が流れ、辺りは霧に包まれました。ただそれだけのできごとでした。それなのに、工房へ戻ると手はどんどん動きました。見た景色や感じた空気が、どの糸を選べばいいか教えてくれていました。そうそう、それでいいのよと微笑まれて。散歩がもっと好きになりました。

今日は家のまわりをゆっくり歩きました。桜の木の葉が少しずつ色づいていて、とても綺麗でした。とくに曇りの日は、ピィと晴れてる日よりも好き。空と木と葉が静かで落ち着きます。この景色も、いつか布に織りこまれる日があるのでしょう。

人の心はとても小さい。自然を取り込むよりも、自然の中に入っていたい。

最後はちょっと詩みたいに。

 

ふつふつ

 

ずっと前から感心のあった樹皮や茎から繊維をとること。でもそれは、遠い土地のできごとのような気がして。木綿や羊毛に手を動かすばかり。

自然が暮らしとともに在る今、心の中にあった草木への興味がまたふつふつと湧き出してきた。

それは染料としてではなく素材としての興味。そういう時は不思議とその興味がいろいろな形で近づいてきます。

アイヌ民具の編み袋にサラニプというものがあることを知ったのはこの夏のこと。サラニプという聞き慣れない言葉と美しい響きに引き寄せられ調べてみると、ハルニレやシナを材料としていることが分かりました。

ずっと前から抱いていた興味が、年月を経てまたふつふつし始めていることが嬉しくて、自然と手を動かしたくなり。

北海道はちょうどとうもろこしの美味しい季節。茹でるために手にしたとうもろこしの皮を見て、これも糸になるのかな。

そうしてできた糸でした。

作り方はとてもシンプル。

1.とうもろこしの皮を天日干しします。

2.しっかり乾かします。

3.細く裂いてビニール袋に入れて、霧を吹いて湿らせます。太さは、ひとつ作ってみると自分の欲しい太さがわかります。

4.とうもろこしの皮を2本揃えて片方の端を片結びして、柱にくくりつけたクリップで結び目をはさみます。撚りをかけて糸にします。継ぎ足す時は新しい一本をへの字にして、なくなりそうな皮と一緒に撚りかけをします。つなぎめの飛び出した部分をカットして完成です。

余談。岩手出身の夫はとうもろこしのことをとっきみといいます。とっきみ、なんか可愛い。

毛洗い

いつになく暑かったこの夏。換気扇が故障してしまい火の仕事から遠ざかっていましたが、ようやく朝晩だけは涼しくなってきたのを機に、近くの羊農家さんから分けていただいた羊の毛をやっと洗うことができました。息子が眠った夜に洗うため、少量の200gだけ朝のうちに湯につけ込みました。

11時過ぎ、つけ込み時に70℃あった湯は35℃まで下がっていました。表面に浮く油分をすくい取ると、茶色い液が現れました。つけ込みでかなり汚れが落ちているようです。タライに新しい湯とモノゲンを用意して、ひとつかみずつ洗っていきます。毛先の汚れもほとんど無くて洗いやすい毛。細かいゴミが多いのでこまめに湯を変えます。

1時間かからずに洗いが終わり、すすぎに入りました。手の感触でぬめりが全然無かったので、通常2回行うすすぎを今回は1回にしてみました。水気をしっかり絞った毛をザルにあけて乾かします。湿度の高いこの土地で手絞りの毛を乾かすのは34日かかりました。この後毛ほぐしという作業をします。

羊農家さんに聞いた毛洗いの方法は食器洗いの洗剤を使うというものでした。以前にはこの地域にも紡ぎ手がたくさんいて、皆で集って毛洗いや紡ぎをしていたのだそうです。でもそれは昔のはなし。

手紡ぎ手織りのホームスパン。細々とでも、ずっと続けていきたいと思います。

 

毛洗いメモ :  200g、モノゲン液 20cc(つけ込み用)20cc(洗い用)、70℃の湯 8L、使った寸胴サイズ 10L

洗い上がり : 歩留62.5、サフォーク種の混合と聞いていたけど思ったより柔らかめ。ひざかけか、仕立て小物の生地にしようかな。

 

羊の毛

近くの羊の牧場で、去年刈られた羊の毛をもらいました。

広げてみるとしっかり乾いていて穏やかな羊の匂い。

家での毛洗いは少量ずつしかできないと思い、300gずつを袋に分けて入れます。全部で1465g!お試しとはいえたくさん。

羊たちは牧草地でおもむくままに暮らしているので、藁がたくさん付いています。でも、外国の草みたいにとげとげはしていないから毛ほぐしでハラハラ落ちそうな予感がします。

サフォーク種に何かが混ざっているそうで、服地向きなのかなぁ。早く洗って紡いでみたい。

 

木彫の店のお話

阿寒湖のほとりに木彫の店美鈴という好きなお店があります。老夫婦と1匹の犬がいて、古い木彫の作品がいっぱいあります。商品と呼ぶより作品と呼ぶほうが似合うお店です。2回目に訪れた時に木彫の銘々皿を買いました。クルミの木でできていることと、もう10年だか20年だかずっと前に作られたものだということを教えてくれました。初めて来た日にも見ていて、手には取らずに帰りました。それからずっと心の中に残っていました。次に来た時にあったら買おうと、密かに思っていました。想像していたより安くてびっくり。2つのうちのどちらを買うか少し迷ってから、こちらに決めました。次に来た時にもうひとつがまだそこにあったら買おうと、また密かに思っています。子どもの離乳食用に良さそうなプレートも見つけたので、きっとまた訪ねるはずです。知らない土地に住み始めて一年、好きな場所がふえてきています。